【執筆にあたって】「ホンダはどこか他と違う−−しかし、どこが違うのか? それは私にとっての長年の謎だった。夢や人生を臆面もなく語る企業。語るだけでなく、それを形にし、高収益を上げ、社会に貢献する。なぜそんなことが可能となるのか。その解を、私は歴代経営者の言葉=TOP TALKS(トップトークス)の中に見出した。ホンダの企業理念とフィットやASIMO、そしてその世界戦略を結ぶもの。それがTOP TALKSなのだ」
◇ はじめに——常に挑戦者であり続ける企業に、不況もリストラも関係ない。内部の社員でさえ「潰れる」と思った大企業病時代。どん底状態から立ち直ったホンダの原動力は、常にチャレンジャーであり続けたことだ。敵はトヨタでも海外メーカーでもなく、ホンダ自身の技術への挑戦、そして「夢」の達成にあった。
経営トップが、社員が、そして製品そのものが「人生」を語る企業、それがホンダだ。人生とは、生活をエンジョイすること。しかも、人が楽しくなければ自分も楽しくない。そこから「三つの喜び」という経営理論が生まれた。
芸術を語る/教育を語る/レースを語る/人生を語る
TOP TALKSの原点
トップトークス−−それは創業者・本田宗一郎の時代から今日まで引き継がれるホンダの経営理念。時代の変化に合わせて形を変えながらも、脈々と流れ続けている「ホンダイズム」を体現した言葉の数々。これら珠玉の名言集から、どのようなクルマが、製品が生まれ、経営戦略が構築されていったのか。17 のキーワードで「理念」と「現実」を結びつけた。「夢」「若さ」「理論」「アイディア」「時間」「コミュニケーション」「調和」「研究」「努力」「桁違いの品質」「個性」「自由闊達」「チャレンジ」「グローバリゼーション」「自主自立」
景気の好・不況にかかわらず、売れるときには売れるのがホンダ車の特徴だ。それは時代の要求と、本質を突いた開発によって、欲しい、買いたいと思わせる、マーケットインの発想に根ざしたクルマ作りが行われているからに他ならない。 N360/シビック/オデッセイ/フィット/スーパーカブ… 失敗作もあった/環境というブランド力/インサイト/燃料電池車とEV/天然ガス車ソーラーカーやEVでの挑戦/地球温暖化と大気汚染状況/安全という基本
史上最高の業績を上げた2002年3月期決算。しかし、これは決して頂点ではない。北米市場のさらなる強化と欧州市場の開拓、そして中国市場のへのアプローチなど、ホンダがグローバル戦略を達成する上で克服すべき課題は多い。今後も収益の柱となる北米市場/二輪・汎用のブランドとフィットの投入で欧州市場の開拓に挑戦汎用製品の底堅さ/「世界一の二輪」を欧米から中国へ/「中国市場を拡大」「ASEANでの相互補充」/メイド・バイ・グローバル・ホンダ/「活き活き自主自立」への道
今や本田宗一郎時代の一五倍もの売り上げを計上。国内では日産を抜き、トヨタに次ぐ二位。しかし、ホンダの本当の戦いはこれからだ。技術にも精通した国際派経営者・吉野浩行が、ホンダの世界戦略から、自らの夢に至るまで、全てを語る「トップトークス」。 ASIMOの夢/マーケットインの物づくり/個人に仕事を任せる手法「活き活き自主自立」へ向けて/自動車メーカーの経営者とはホンダの世界戦略/一番を狙うホンダ
◇おわりに
◇ホンダ年表
◇用語インデックス
御堀直嗣(みほり なおつぐ)
1955(昭和30)年東京都港区生まれ。
玉川大学工学部機械工学科卒。専攻は流体工学。1978年〜79年にかけてFL500レースに参戦、最高4位。翌80年からFJ1600に移行し、81年に優勝経験あり。84年よりフリーランスライターになり、さまざまな雑誌等で執筆活動を展開。長年の自動車に関する経験をもとに、自動車関連の著作も多数ある。現在は自動車と地球環境及びエネルギー問題をテーマに、エコフレンドリーカーに関する記事・著作の執筆を行うほか、モータースポーツやバリアフリーなど、自動車が持つ未来の可能性と人との関係を広汎に探究中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本EVクラブ副代表。(有)ノーティーボーイ・アンド・カンパニー代表取締役。
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