会社勤めをしている人には「会社の健康診断」があり、国民健康保険の加入者であれば、自治体から「健康診断」のお知らせが届く。そして、受診すると、半数以上の人が「血圧が高い」「血糖値が高い」「コレステロールの数値が高い」など、「異常」という結果を知らされる。人間ドックに至っては、9割の人が「異常→再検査」となる。だが異常とされた数値が、どれほど異常なのか。「正常」とされる基準値は信用できるのか…
本書では、現在の健診・人間ドックにどれだけ意味がないか、それどころかなぜ却って問題なのか、数値の設定の矛盾点、薬漬けにされる異常な事態、そして薬剤業界の横暴とも呼べる実状まで、一刀両断にする。
健診・人間ドックは病人をつくりだすメカニズムだ︱︱はじめに
世界でも珍しい奇妙な集団健診 22
厳しすぎる「正常」の範囲 23
「判定基準」のほうがおかしい? 25
「受診者の半数以上が異常」こそ異常 28
健康な人にもクスリが投与されている 30
なぜ厳しい基準値にするのか 32
医師が増えると病人も増える? 33
必要以上に煽られる不安 34
健診での「異常」は異常ではない 36
結局はクスリをたくさん売るための手段 37
基準が男女別・年齢別でないのはおかしい! 40
病院によって基準値が異なる!? 42
厳しい基準なら早期発見できるのか 44
安心のためだけにコストをかけていいのか 46
人間ドックの受診者は年間300万人以上 50
恐るべき「人間ドック」の実態 51
そもそもムダな「精密検査」 53
なぜPETでがんが見逃されてしまうのか 55
早期発見・早期治療だけでは克服できない「がん」56
人間ドックで「客集め」58
有効性に疑問だらけの健診 62
欧米の研究でも「充分な医学的根拠なし」と一刀両断 65
長生きしたければ健診を受けるな 66
ムダな検査や治療を追放する新しい潮流 68
以前とは変わった「病気の概念」69
「下げすぎは危険」なコレステロール、血糖値、BMI 72
血圧の測定は有効な検査 74
加齢によって血圧が高くなるのは当然 76
血圧は1回でなく何回も測るといい 77
高血圧よりも降圧剤のほうがリスキー 79
いまこそ必要なうつ病の問診 84
うつ病かどうかは自己診断できる 86
なぜ、うつ病が増えたのか 90
飲酒に対する問診の必要性 92
アルコール摂取量と病気は無関係? 95
肝臓がんと肝硬変の原因は酒ではなかった 96
アルコール依存症は自分でチェックできる 99
圧倒的に多い依存症を認めない人 103
個人差が大きいアルコールの処理能力 104
アルコールに強い人ほど依存症に注意 106
喫煙に対する問診も不可欠 108
高齢化とリンクするCOPD 110
糖尿病の検査はⅡ型糖尿病の予防策 112
ひとつの基準だけでは判断できない糖尿病 114
コレステロール値は高いほうが健康!? 118
悪玉コレステロールは本当に「悪」なのか 119
コレステロール値を「気にしなくていい人」とは? 120
なぜメタボ健診に意味がないのか 122
人気のアンチエイジングドックは信頼できるか 124
母子感染を防ぐためにはATLウイルス検査を 127
HPV感染から起こる子宮頸がん 129
子宮頸がんの早期発見を可能にするHPV検査 131
手軽にできる遺伝子検査やワンコイン検査も登場 132
独自基準の「セーフ」「アウト」にある落とし穴 136
短命をもたらした健康習慣 138
重要なのは「個人の事情」 139
問診が不充分な健診も無意味 140
健康管理は自己責任の時代に 143
ホームドクターとともに健康を管理 145
かかりつけ医は何を診てくれるのか 148
個人個人に“正常値”がある 150
ホームドクターの賢い選び方 151
健診・人間ドックを受けるリスクをから目をそらすな 152
検査はメリットよりもリスクのほうが大きい 154
看過できない手術のリスク 156
人間ドックを受けないのも勇気ある選択 158
露呈した製薬会社のデータ不正 162
明るみに出ない「不適切な関係」164
新薬が出ると患者数が増える謎 166
医療費増加の“真犯人”は誰か 167
「医療費を減らしたい」人たちの密約 170
副作用のないクスリはない 172
そもそも飲まないほうがいいクスリとは 174
自分のクスリを正確に把握する必要性 175
たくさんクスリを出す医師とは関わるな 177
日本の終末医療費は9000億円 182
延命医療は医師の倫理によるものか 185
延命に役立たない不可解な検査 186
自分の最期はみずからが決める 188
中原 英臣(なかはら ひでおみ)
医学博士。1945 年東京生まれ。東京慈恵医大卒。米セントルイスのワシン トン大学でバイオ研究に取り組む。専門は遺伝子研究。2011 年に中咽頭が んになり、5 年間で2 度の転移を経験するも克服。山野医療専門学校副校長、 新渡戸文化短期大学名誉学長を務めるかたわら、元気で執筆やコメンテーター など幅広く活躍中。著書に『テレビじゃ言えない健康話のウソ』『知らないと 損する遺伝子のヒミツ』ほか多数。
矢島 新子(やじま しんこ)
医学博士。東京生まれ。東京医科歯科大卒。パリ第一大学ソルボンヌ大学院 医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、川崎市保健 所勤務などを経て独立。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。現在まで 20 社以上の企業の産業医を務める。著書に『医者が増えると、病気が増える?』 (共著)ほか。
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