出版業界は2004年、8年ぶりに対前年の売上がプラスに転じたものの、2005年は再び前年割れが懸念されるなど、長引く停滞期を脱しきれてはいない。
そんな中においても、会計学の本としては異例のヒットとなった『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』や、ドラマ化・映画化まですすみ、年を跨いでもに売り伸ばしている『電車男』や『世界の中心で、愛をさけぶ』などのメガヒットも誕生している。
年間7万7000点余りの新刊の中で、これらの本は何が他と違うのか、いかにしたらベストセラーを生み出すことができるのか、数多くの事例を取り上げ、そのアイデアとヒントを提供する。
プロローグ
ベストセラーの作られ方——派手なヒット作と地道な話題作*植田康夫
——月刊『創』特集座談会より
植田康夫、清田義昭、佐野眞一、篠田博之 ほか
◎2000年の出版界
生き残りをかけた暗中模索の中で翻訳書のベストセラーが相次ぐ
▼ 本当に本は読まれなくなったのか?
▼ 専門知識をわかりやすく伝える書き手がいない
▼ 「インターネット書店」のせめぎ合いの背景 ほか
◎2001年の出版界
老舗取次の倒産などで閉塞感深まる。世相を反映し癒し系の本がヒット
▼ 老舗取次・鈴木書店が倒産に至った背景と経緯
▼ 売り方に工夫を凝らせばミリオンセラーは生まれる
▼ 読者の側に「書き手になりたい」志向が… ほか
◎2002年の出版界
不況脱出の道を探りながら“ハリ・ポタ騒動”に席巻された出版業界
▼ 2002年の出版市場 6年連続マイナス成長
▼ 初版230万部!! “ハリ・ポタ騒動”の舞台裏
▼ 加速する一極集中のメガヒット現象 ほか
◎2003年の出版界
ついに“雑低書低”時代の到来。ミリオンセラーは『バカの壁』1点のみ
▼ 出版物の販売額は7年連続の前年割れ
▼ 辞書は電子メディアが主流に
▼ 売れなくても新刊を出し続ける理由 ほか
◎2004年の出版界
販売金額が8年ぶりにプラスに転換。ミリオンセラー7点で店頭が賑わう
▼ 『電車男』のヒットで行きつくところまで行った
▼ ミリオンセラーは本を読まない人が読んだ本
▼ フリーマガジン、フリーペーパーの気になる拡大 ほか
——週刊『新文化』特集記事「ベストセラー・仕掛人」他より
◎2000年
◆『冷静と情熱のあいだRosso』『冷静と情熱のあいだBlu』
同名小説を同時発売! アイデアの面白さで仕掛ける
◆『話を聞かない男、地図が読めない女』
目利きの編集者の真骨頂。「売れる」という直感がズバリ当たる!
◆『「捨てる!」技術』
素材・企画のイキの良さを新書ならではの機動力で実現 ほか
◎2001年
◆『チーズはどこへ消えた?』
いわゆるビジネス書の堅さを徹底排除、96頁880円で初版2万部スタート
◆『金持ち父さん 貧乏父さん』
タイトルや表紙イラスト、判型にこだわり、平易な表現で読みやすさを第一に
◆『新潮ムック 月刊シリーズ』
毎回丸ごと一冊タレント一人。その上、低価格のムック写真集 ほか
◎2002年
◆『ザ・ゴール』
専門用語を徹底的にやさしい言葉に置き換え、登場人物の一覧で読みやすく
◆『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』
出版社一丸となった英会話体験が、読者への名アプローチ法を開発
◆『生きかた上手』
日野原氏の一人称の語り口調で心に響く癒しのメッセージ
◆『幸せな小金持ちへの8つのステップ』『お金のIQ お金のEQ』
広告宣伝ナシ。ネットとメール活用で最大限の効果
◆『天国の本屋』
「絶対に売るべき本」と仕掛けたのは地方の書店店長 ほか
◎2003年
◆電子辞書『英辞郎』
100万語達成後も採録が続く世界一安くて役に立つ電子辞書
◆『世界の中心で、愛をさけぶ』
新入り出版社営業マンが既刊書から発掘した「セカチュー」
◆『14歳からの哲学』
学校と教師に失望した出版社社長の父親がわが子に読ませたいと
◆『小さいことにくよくよするな!』
編集トップと広告宣伝トップが同一人物。販促努力と宣伝戦略で長期販売中
◆『新実用BOOKS』シリーズ
「生活ベースに」「安い」がたくさん売れる本作りのキーワード ほか
◎2004年
◆『ダーリンは外国人』『ダーリンは外国人2』
“スキあらば楽しませたい”の入社2年目編集者の大サービス精神
◆『江戸三〇〇藩最後の藩主 うちの殿さまは何をした?』
中高年の知的好奇心とウンチク好きを充分満足させた新書判
◆ 『骨単〜語源から覚える解剖学英単語集』
懐かしい響きのネーミング、会社初の委託販売でベストセラー
◆『ダ・ヴィンチ・コード』
日本の作家が取り扱わないテーマにもかかわらずブックフェアで編集者は直感!
◆『くれよんのくろくん』『くろくんとふしぎなともだち』
配本前から、まず書店現場の人々に愛されるものでなければならないと ほか
◎2005年
◆『内側から見た富士通』『「国家破産」以後の世界』
ネットとの違いは情報の信憑性。想定読者層は勝ち組ビジネスマン
◆『頭がいい人、悪い人の話し方』
「誰にでも身に覚えのある内容だから人に勧めることができた」と普及担当者
◆『実録鬼嫁日記-仕打ちに耐える夫の悲鳴』
建前としての小説を超えた本音としての「ブログ小説」
◆『失踪日記』
家庭と仕事を放り出した漫画家が失踪の実話を漫画にし復活
◆ 『四日間の奇蹟』
売上げを伸ばしている書店の手書きPOPを徹底研究 ほか
エピローグ
ベストセラーづくりに欠かせない仕掛け*清田義昭
■監修:植田 康夫(うえだ やすお) 上智大学文学部新聞学科教授。
1939 年生まれ。1962年、上智大学文学部新聞学科卒。1962年から89年まで(株)読書人編集部に勤務、取締役編集部長などを務める。89年に上智大学助教授となり、92年から教授。05年4月に特別契約教授の待遇となり、6月から(株)読書人取締役編集主幹を兼務。日本出版学会会長。
■清田 義昭(きよた よしあき) 株式会社出版ニュース社代表。
1943年生まれ。立正大学文学部哲学科卒。
東京都千代田区飯田橋2-3-1 東京フジビル3F
Tel.03-5357-1511 Fax.03-5212-3900