静止衛星、周回衛星、探査衛星など様々なかたちで地球の周りを飛んでいる人工衛星。まさに科学技術の粋を集めた結晶と呼べる存在です。 日本初の人工衛星「おおすみ」以来、人工衛星の開発に取り組むNECの技術者たちが、図版や写真を使って人工衛星のメカニズム、その運用やシステムなどをわかりやすく解説する。「はやぶさ」の奇跡の帰還で、一般の人も興味を持ち始めた「人工衛星」のすべてがわかる本。
気象衛星、通信衛星、探査機…。人工衛星には、どんな種類があるの?/12
人工衛星は東日本大震災後、どんな社会貢献をみせたのか/16
なぜ人工衛星の存在が「社会インフラのひとつ」といわれるのか/20
いま、まさに急ピッチで開発が進む2012年打上げ予定の「あすなろ」/24
▼人工衛星は秒速7kmの猛スピードで宇宙空間を飛んでいる/30
なぜ人工衛星の打上げが日本では種子島か内之浦なのか/32
え!? 人工衛星は、好きなときに打ち上げることができない?/36
人工衛星は1機だけではなく“相乗り”でも打ち上げられる?/40
垂直に打ち上げられるロケット。本当は「水平方向」に飛びたい?/42
打ち上げる方向が「静止衛星は東、極軌道衛星は南」という理由/46
人工衛星の軌道は自由自在に決められない!?/48
▼管理の厳しい製造現場。「じつは手作り」にびっくり!?/52
精密機械がギッシリの人工衛星。どんな工場でつくられているの?/54
人工衛星1機に数万本のケーブル。誰がどうやって配線しているのか/56
なぜボディが箱形だったり円筒形だったりするの?/58
「はやぶさ」の太陽電池パドルはどうしてあの形になったの?/62
そもそも人工衛星の中はどんな構造なのか/64
人工衛星はどんな材料でつくるの? 宇宙では使えない材料もあるのか/68
意外!? 人工衛星の製造現場で「ミシン」が使われている!/70
いまでもハンダごてを使った手作業が行なわれているワケ/72
製造工場から打上げ場所まで人工衛星がたどるルートは?/74
なぜ、打上げの直前まで人工衛星は試験が続くのか/76
▼数千kmの彼方から地球を見つめ、さまざまな情報を発信/82
人工衛星と地球との間は、どうやって交信しているのか/84
遠く離れた人工衛星の状態も地上局で監視・制御できるの?/88
人工衛星は、どんなカメラで撮影し、どうやって画像を地球に届けるのか/92
観測衛星の光学カメラをコントロールするのは誰?/96
レーダーセンサーにはどんな特徴があるのか/98
地下に眠る資源をどうして宇宙から発見できるの?/100
人工衛星にとって、なぜ「姿勢は死活問題」なのか/104
なぜ、何もない宇宙空間なのに人工衛星の姿勢がふらつくのか/106
では、どうやって宇宙空間で正しい姿勢を保っているの?/108
▼人工衛星は宇宙空間を自由に飛べない?「見えないレール」の上を飛ぶ/114
どうやって人工衛星は自分の位置を知るのか/116
人工衛星が正しい軌道を保ち続ける方法とは?/118
どれくらいのスピードで人工衛星は飛んでいるのか/120
人工衛星は落ちないの? 万が一の危険は回避できるのか/124
なぜ人工衛星には軌道制御が必要なのか/126
軌道高度の調整は、どうやって行なわれるの?/128
では、軌道傾斜角の調整をどんな方法で行なうのか/130
どんなエンジンや燃料が人工衛星に積まれているの?/132
▼「はやぶさ」の帰還は技術者の想像力なくしてあり得なかった!/138
人工衛星の大きさはどれくらい? 重さはどんなものなの?/140
なぜ人工衛星には軽量化が求められるのか/144
すべての人工衛星に「共通する装置」はあるの?/146
温度差の激しい宇宙でどうやって身を守るのか/150
なぜ人工衛星は金色や黒なのか。宇宙ステーションはなぜ白い?/154
人工衛星の太陽電池パネルは一般住宅用と同じもの?/156
「高い信頼性と品質」はどうやって確保するのか?/158
地上でどんな試験を受けて宇宙へと旅立つのか/162
人工衛星にも「寿命」がある? 何によって決まるのか/164
どんな「危機回避」の対策が人工衛星にあるのか/166
トラブルが発生したら人工衛星自身で判断できるの?/170
▼日進月歩の科学技術。人工衛星の未来の“かたち”とは?/174
水星探査機「MMO」に採用された最先端技術/176
「宇宙ヨット・イカロス」の驚くべきテクノロジーとは?/178
地上と人工衛星との交信が「光通信」になる時代がくる?/180
すべてのミッションを完了したら人工衛星は、どうなるのか?/184
人工衛星に積まれているコンピュータは“最新鋭”?/186
宇宙デブリから人工衛星はどうやって身を守るのか/190
「デブリ」を回収するための人工衛星も実現可能?/192
気づいていないかもしれないが、誰もが人工衛星を一日中使っている!/28
人工衛星の軌道を決定づける「ケプラーの法則」とは?/44
宇宙空間の人工衛星。あの中は真空なの?/50
なぜロケットは2段式や3段式になっているのか/80
人工衛星はどうやって宇宙から地球を見ているのか/112
人工衛星の所在がわかる「ケプラーの軌道6要素」とは?/122
「はやぶさ」で注目を集めたイオンエンジンは日本独自の技術/136
地球から飛び立った人工衛星はどこまで行けるのか/143
人工衛星で使われる箱型の「容器」は「組み立てられたもの」ではない?/149
「信頼度」を高めるにはどうしたらいいか/169
自動車が給油するように人工衛星も燃料補給できる時代がくる?/172
絶妙なネーミング? 光通信実験衛星の名は「きらり」/183
軽量化と作業時間の短縮に貢献。「スペースワイヤ」という新技術/189
参考文献&資料/197
カバーデザイン/石田嘉弘
カバーイラスト/田中英樹
本文イラスト/つのだ・さとし
編集協力/大塚 実
本文組版/ニシ工芸
NEC「人工衛星」プロジェクトチーム
日本電気株式会社(本社 東京都港区)は、1899年に創業された我が国を代表する電機メーカーで、NEC(エヌ・イー・シー)の愛称で親しまれている。1977年に当時会長であった小林宏治が「C&C(コンピュータとコミュニケーションの略)」をスローガンに掲げ、情報通信とコンピュータの融合を牽引した。大型計算機のみならず、パソコンの製造・販売に、いち早く取り組み、その普及にも多大な貢献を果たすなど、社会の情報化へ向けた先駆的な役割を演じている。
宇宙開発への取組みも先駆的だ。1956年にペンシルロケット用テレメトリ送受信装置を東京大学生産技術研究所へ納入したのを皮切りに、日米間で行なった世界初のTV画像の衛星通信実験や、東京オリンピックの衛星中継にも参画し、その後の衛星通信の世界的普及にも貢献した。
人工衛星の開発では、我が国初の人工衛星「おおすみ」に始まり、日本中の話題をさらった「はやぶさ」や、東日本大震災時にも活躍した「だいち」「きずな」など、これまでに60機以上の実績がある。
「人工衛星」プロジェクトチームは、本書の製作を目的に、関係会社を含め、設計から製造、販売まで、あらゆる分野のエキスパートを結集。情報提供、原稿作成支援・レビューなどに、延べ70人以上が携わった。
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